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I. 宇宙から見た屋久島


洋上に浮かぶ屋久島の姿は、宇宙飛行士毛利衛さんもスペースシャトルから認めたと 云われています。ここでは、人工衛星からの無人観測によるリモートセンシングデー タから作成した画像と、それを数値標高データと組み合わせて立体表示した画像を御 覧下さい。

リモートセンシングデータでは、人間の眼に見える光(可視光)だけでなく、 近赤外光や物体の出す熱赤外線も組み合わせた科学の目で観測したものです。
このページは、鹿児島大学南西地域研究委員会総合研究「屋久島」(平成3-6年度) の中で行われた農学部・工学部・教育学部メンバーによる研究[1]に基づき、 新たに開発したパソコンによる高速3D表示法[2]を用いたものです。 屋久島の衛星画像については[3]の研究、 地形とリ ニアメントについては[4]の研究などがあります。

屋久島の位置

図1 屋久島の位置 図2 屋久島の衛星画像
屋久島は,九州最南端佐多岬から60km南方にある,東西28km、南北24km、周囲132km、面積503平方kmのほぼ円形に近い島である。九州最高峰である,宮之浦岳(標高1,935m)のほか,1000m以上の山が多数存在し一大山岳島を形成している。その雄大な景観から,「海上アルプス」とも呼ばれている。暖かい海岸から2000m近い山頂部まで多様な植 物の垂直分布が見られ、樹齢数千年の屋久杉などの自生する深い山林には鹿や屋久猿 が生活する独特の生態系がある。この島の自然は1993年には日本で初めての世界自然 遺産に登録され、2000年5月には世界遺産会議が開かれて環境保全と遺産を生かした 地域づくりが話し合われた。
図1はランドサット5号衛星が1988年4月15日に観測した西九州と、1993年3月5日に観測した九州中央・東部や屋久島などのTMセンサーによるデータを合成したもので、近赤外の反射光を緑で表している。図2はそのうちの屋久島で、クリックしてさらに大 きく出来る。

a. 北から

b. 西から

図3 屋久島のLANDSAT−5/TM
(RGB:b3,b2,b1)

大きい画像(32k) 

非常に大きい画像(231K)

 c. 東から

d. 南から

図3は同じデータの可視光の3原色(青・緑・赤)を用いたもので、数値標高データ と組み合わせて東西南北の上空から見たをa,b,c,dに示す。どれもクリックし て大きく出来る。


屋久島の地形

屋久島の基盤は、中世代末期から新生代初期の堆積岩である四万十層群で、北西部を除く海岸部を形成している。山岳部は、基盤岩に貫入してきた花崗岩体で形成されている。しかし、全島がほとんど緑で覆われているため、太陽放射に対する植物の近赤外線の強い反射 を利用して、近赤外バンドの濃淡画像に見られる陰影から地形学的検討、特にリニア メントや断層構造を見るのに適している。
 図4は,LANDSAT-5 TM Band4(0.76〜0.90μm)のモノクロ画像である。この画像で は、ほぼ東西の方向と、およそ南西-北東の方向に斜交する多数のリニアメント(線 状地形)が平行にあるのが明瞭に認められる。さらに、北西-南東方向にも目立たな いがリニアメントを読みとることが出来る。多くの谷はこれらのリニアメントに沿う ようにジグザグしている。
 これは、島全体が一つの塊としてゆっくり冷却して出来たためで、花崗岩としての特 徴が山岳部全体の地形に現れたものである。近赤外画像では、衛星観測時の日射の違 いによって陰影が異なるため、衛星の種類と観測時期によってリニアメントの現れ方 が異なる。
 図5に示す千尋滝のように,多くの谷で花崗岩の一枚岩を見ることができる。また, 標高が高いところでは,図6-1,6-2のように、いろいろな形に風化した花崗岩が露出している。近づいて見 ると、その表面には白い正長石の巨晶が見られる。

図4. モノクロ画像と、その立体表示
(一般に縦方向を1.5倍強調)である。どれも クリックして大きく出来る)

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図5.千尋滝

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図6-1 山頂付近のパノラマ


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図6-2 山腹のパノラマと花崗岩


熱環境

図7 屋久島の熱画像
(Landsat-5/TM BAND6)

 図7は温度の高い所を明るく、低い所を暗く表した1993年3月5日午前10時過ぎの熱画像(地表面の温度分布)である。日光を浴びた南東斜面が暑く、日陰の北西斜面は 寒いことが分かる。 また、海に流れ込む川の水が冷たいことも読みとれる。 

 クイズ:冷たい川の水が、暖かい海水の表面に漂うので、衛星から観測できるのです が、 なぜでしょう?[答はこのページの最後に]

 屋久島全体を見ると、海岸付近の植物のない裸地の温度が最も高く、中央の山岳部で 標高が高くなるほど寒くなる傾向があることが分かる。温度と標高との関係は、日射 のない夜間の熱画像では一層明瞭である。

 

a.

b

c

d.

図8 屋久島の熱環境についての画像.

 図8-aは1995年3月7日午後9時半頃の屋久島の温度分布を、色分けしたものである。 陸地が冷え込むのに比べて、あまり変わらない海の温度が最も暖かい。標高が上がるにつれて寒くなるのは、熱画像を標高により立体化した図(図8-b) や、それを横から見た図(図8-c)で良く分かる。 また、温度分布だけを簡単に高さに 換算した図(図8-d)でも、地形の特徴が表される。
 なお、ここでの温度は熱赤外線の強さを人工衛星からTM6バンドで観測して地表面温 度に換算したもので、地表面の性質や大気の吸収の影響を被っている。本当の温度は 観測値より数度C高いと推測される。


屋久島と雲

図9.大規模な雲列のNOAA画像
(左:1988.4.15, 中:1992.11.7, 右:最近)
図10.1992年4月17日のノア画像

 人工衛星からの可視域・赤外域による地表のリモートセンシングでは、雲に覆われな いことが必要である。ひと月に35日も雨が降ると云われる屋久島の気象条件は厳し く、チャンスは限られる。
 気象統計では、屋久島は年間を通しての降水量や日降水量 の日数で全国一にランクされることも多い。 実は、これは北東の海岸部の屋久島空 港そばにある屋久島測候所(上屋久町小瀬田)の地点におけるデータであり、島の大 半を占める山岳地帯ではこれよりはるかに雲に覆われ雨量も多く、小杉谷や花の江河 では年間 8000mmを越える記録がある。雨量や天候は地形の影響を受けやすく、海抜 1900m以上の山岳部をかかえる屋久島ではそれが特に著しい。日本全域を含む東西 3000kmの広い視野で毎日観測を行っている気象衛星NOAAデータを調べると、屋久島測 候所の記録で快晴とされる日でも、山岳部が雲に覆われていることがしばしば見ら れ、山岳部と海岸部の天候の大きな違いを示している。
  また、韓国の済州島とともに、屋久島は海上に浮かぶ2000m近い山岳島のため、強風 の時には大気の流れに強い影響を与える。その結果、笠雲や吊し雲のような地形性と ともに、下流にカルマン渦列雲などの大規模な雲列をつくるのが気象衛星NOAAの画像にも見られる。このような雲列を図9に示す。
 図10は、九州から沖縄にかけて珍しく晴れたシーンである。
 図11は、屋久島の風下の上空に見られたU字を倒したような馬蹄形の吊し雲である。

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図11.吊し雲(安房港から)


[クイズの答] 海水と混じり合う前の河川水は塩分を含まないために、海水より冷たくても密度が小さく、海水の上に広がる。安房川などの河口で泳ぐと、表面が冷たく 深い所が暖かいことが多いと云われている。

LANDSATデータは米国政府所有で、宇宙開発事業団により受信処理提供された。 
NOAA/AVHRRデータの受信・データ提供機関については「H. 気象衛星NOAAがとらえた 九州の火山噴煙」に記す。
立体表示の作成に当たっては、建設省国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地 図50mメッシュ(標高)のデータを使用したものである。(承認番号 平12総使、第116 号)


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[1] 佐藤宗治・宮里満・石黒悦爾・吉田茂二郎・矢野利明・小山隆行・木下紀正、 リモートセンシングによる屋久島の森林・土地利用区分のシステム化に関する研究、 鹿大南西地域研究資料センター報告特別号5,pp.41-51,1994. 
[2]戸越浩嗣・木下紀正・冨岡乃夫也, 数値標高モデルとリモートセンシングデータを用いた教育用3D画像表示システムの開発, 日本リモートセンシング学会第27回学術講演会論文集, 273-274 ,1999
[3] 田中總太郎・三島征一・小牧勇蔵、「屋久島森林環境保全のための画像地図」 の試作、RESTEC、36, 18-21, 1994;屋久島森林環境保全のための衛星画像地 図について、日本リモートセンシング学会 第19回学術講演会論文集,191-192, 1995.
[4] 山口靖・長谷紘和,多様な画像によるリニアメント頻度の解析−レーダー画像 の屋久島地域への適用例について、写真測量と リモートセンシング,22-3, 4-13, 1983, 木下紀正,久保秀一郎、山岳画像データに対する簡易で効果的な地形効果補正法、日 本リモートセンシング学会 第16回学術講演会論文集,57-60, 1994.